このエントリーをはてなブックマークに追加
Post to Google Buzz
Bookmark this on Yahoo Bookmark


撮影 2日目

 

やまと錦魚園 雨 台風接近

雨は強くなったり弱くなったり。天候が心配される中、撮影準備は朝から粛々と。
 
機材を大切に、借りている撮影場所をよごさないように、雨の中どのメンバーも黙って静かに動く。
 
今日の花子は「5才の花子」。
おふとんのなかでおかあさんと話すシーン。夜の場面なので6畳ほどの室内は薄暗くしつらえてある。かわいいカラフルな子供用ふとん。オレンジ色の甘いあかり。すでにここだけ別世界で、台風の雨なんかどこのハナシだ?というかんじ。
 
花子の部屋ー
花子の部屋を見てみよう。黄色い通園バック。黄色いぼうし。ああ、幼稚園に通っているんだ。そして花子は金魚好き。本当に金魚が好き。
家中、部屋中「き・ん・ぎ・ょ」 「き・ん・ぎ・ょ」
 
セロハンテープの台にはってあるシール。きり絵の額。いろいろな人が描いた絵。それにカレンダーもみんな、き・ん・ぎ・ょ。
極めつけは水槽。3匹の赤い金魚がおよぐレトロなやつ。それを、ぬいぐるみのくまが、うさぎが、ペンギンが、じっとのぞきこんでいる。
それもこれも、スタッフさんのこころづくし。偶然に置かれたものは一つもなく、みな5才の花子の気持ちをあらわす道具。監督も役者さんもすごい。でもこんな小さなところに、映画をつくるエネルギーがともっている。
 
5才の花子ちゃん登場!
「こんにちは、きょうはよろしくおねがいします」
あ~、撮影の疲れもとろけるような可愛い声!
スタッフのひとりがそっとつぶやく。
「天使だ・・・」
 
長い待ち時間を控え室でほがらかに過ごしたミニ花子ちゃん(以下5才のときの花子ちゃんはこうよばせていただきます 笑)。お芝居に入ったとたん「きんぎょのだいすきなはなこ」になった。
おふとんにはいったままの演技をするミニ花子ちゃん。大人だらけの撮影現場。大人でもひるみそうな物々しい雰囲気。でもミニ花子ちゃんは、動じることなく、あどけない口調でせりふをくりかえす。……可愛い。
 
「もう、寝よっか」と「さあ、寝よっか」
おかあさんのせりふ。金魚の王子さまを折り紙で折って花子に渡す。花子の質問に動揺していたおかあさん。折り終わるのをじっと待っていた花子に質問をはぐらかすべく、慌てて言う。
「……もう、寝よっか」
これにスタッフから意見が。
—折り紙のために、花子を待たせていたのに「もう」はおかしいんじゃないか……。
監督もごもっともですとそれを受け入れ、せりふはいったん「さあ、寝よっか」に。
撮り直して、何回もモニターでチェック。おかあさんもミニ花子ちゃんも、嫌がらず何度でも繰り返す。
 
さて、結局このせりふ、オッケーでたのは、これ以外のバージョンでした。
なんでしょう?映画でぜひ確かめてください。
「もう」と「さあ」それに「(本番で使われるもの⇒ひみつ)」
たったひとことの台詞にも、みんなの思いはしっかりつまっています。
 
「ごめんなさい……」
狭い室内での撮影なので、モニターを見つめる監督は、おかあさんの顔の映る角度や分量が気になるよう。何回も繰り返し撮り直す。
立派につとめていたミニ花子ちゃん。
あ、ちょっとかんじゃった。
幼いといえど、プロのミニ花子ちゃん。即座に小さくなってあやまる。
 「ごめんなさい……」
「いいよ~、いいよ~」と言うように満面の笑顔の監督。
つられて、ミニ花子ちゃんもにっこり。
 
緊張が一気に解けてふっと、その場の空気が動きました。
くりかえし、くりかえし。丁寧に映画は撮られていきます。

 

 

(文・写真 取田智子)