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撮影 3日目

 

花子ちゃんの心に火がついた

 

 

台風襲来。警報がでて、市内の小中学校は休校だとか。なんとも因果な日だが、昨日に続き、やまと錦魚園の撮影は、風雨に負けず粛々と決行されていく。

 

こんな日は、音声さん泣かせらしい。雨の音がうるさい。風もがたがた。
撮影の邪魔にならないように、私たちもそっと部屋のすみで息をころす。
 
それでも監督は、終始穏やかで、撮影自体は順調に進んでいく。
子役の花子ちゃんと、おとうさんが登場。
 
今日は花子の家のキッチンで、この二人が言い争うシーン。
ドラマの筋に大きく関わる、大切な部分になる。
 
花子ちゃんもおとうさんも、そつなくシーンをこなしていくのに監督はなかなか、オッケーをださない。
花子ちゃんに何か話している。
 
「もっと気持ちを表に出すように」とでも、言われているのか、監督はぐるぐる肩を回してみせながら、花子ちゃんの背中をポンとたたく。
 
花子ちゃんは、笑顔でうなずいているけれども、3回、4回と繰り返すうち、笑顔の中に不安が見え隠れするようになる。
「あれ?私、監督のイメージと違ってるのかな?」
 
穏やかな口調だけれども、監督はねばり強い。
5回、6回……同じことが繰り返される。そして7回目。 
 
「おとうさんのあほっ!!」 
こみ上げてきた気持ちに、花子ちゃんのせりふの語尾がふるえた。
その瞬間、監督が大声を出す。
「カット!オッケーです!」
 
花子ちゃんの心に火がついた。監督がまっていた瞬間が今、やってきた。
メイクさんが彼女にかけよって、その目元をハンカチで押さえる。
汗なのか、涙だったか……。
 
-そうして、花子ちゃんとおとうさんの演技が、繰り返されているころ。
外では、10人あまりの女性のみなさんが、撮影の終わりをまっていた。
 
塩崎監督のおかあさま、良枝さんとそのご友人。
早朝から炊き出しをし、スタッフに昼食を差し入れてくださったという。

そぼろ、いりタマゴ、鶏肉の揚げ物、オレンジ、えんどう豆……。
色とりどりの心づくしのおかず。
 
みなさん、良枝さんとは三年来のおつきあいとのこと。
「今日はみんなで、塩崎監督の応援に来たんです」
台風の合間のくもり空に、そこだけぱっと明るくなるような笑顔がたくさん。
 
監督。ここにも応援団、たくさんいらっしゃいます。      (文・写真 取田智子)